第23回 第25回

随想第24回

壱岐雅章 大交流時代の波 公益財団法人 仙台観光コンベンション協会
専務理事 壱岐(いき)雅章

人口減少社会の到来が叫ばれてから久しいが、平成二十三年から我が国の人口は減少に転じたと言われており、いよいよこの問題も現実味をおびてきた。こうした中、国は観光を成長戦略の柱のひとつと位置づけ、東京オリンピックが開催される2020年までに訪日外国人の数を2千万人とする目標を掲げている。

人口減少社会において、交流人口増加には、地域経済の活性化など、大きな期待が寄せられている。定住人口一人当たりの年間消費額は124万円だそうだが、これを旅行者の消費に換算すると、外国人旅行者だと10人分、宿泊を伴う国内旅行者だと26人分に当たるという。

私が社会人になった当時のことであるが、お昼になると、職場の仲間と牛タン定食をよく食べに行ったものだ。当時、牛タン定食は千円でお釣りが貰え、その釣銭でタバコが買えたと記憶している。その後、原材料の高騰などもあって、この業界は大変厳しい時代を経験してきたが、今では週末ともなると、観光パンフレットを手にした客が列を成す店も見受けられ、観光客の力を実感させられる。

以前、私は仕事で度々タイを訪れた。仕事柄、観光地も視察したが、私が心惹かれたのは現地の人々が利用する食堂やスーパー、スポーツクラブ、交通機関など、言わば彼らの日常そのものであった。近年、外国から日本に訪れる観光客もまた、日本人の日常に宿る魅力に注目し始めている。いわゆるクールジャパンだ。私達が日頃から利用しているサービスの殆どは、その対象になると考えていいだろう。食堂もバーもパン屋もパチンコ店も・・・。外国語表記などの基本的な対応は必要になるが、私達日本人のニーズに応えるサービスは、外国人観光客の目にも輝いて映るはずだ。

震災の影響もあり、まだ東北は訪日外国人の増加を実感できないが、大交流時代の波は間違いなく東北にも押し寄せて来る。その時に備え、私達自身が魅力を感じる街づくりを進めていきたいものだ。

次回は、アリティーヴィー(株)  副社長・アナウンサー 浜 知子氏