第39回 第41回

随想第40回

佐藤文行 「食卓の変化」への対応 マルブン食品株式会社 代表取締役 佐藤文行

ご縁を頂き、投稿をさせて頂く事になりました、塩釜の蒲鉾屋でございます。一言で「蒲鉾」と言いましても、揚物(さつま揚)、焼き物(笹蒲鉾、焼竹輪等)、蒸し物(板蒲鉾)、茹で物(つみれ、はんぺん)と、造り方で多様な顔を魅せるのが練り製品類の面白さで、皆様の目に触れる機会が多いのは「正月のおせち」「おでん種」などではないでしょうか?そして、土地それぞれにご当地蒲鉾が存在する事も特徴です。宮城では言わずと知れた「笹蒲鉾」が有名ですが、富山の「昆布巻」、山陰の「豆腐竹輪」、小田原の「板蒲鉾」、銚子の「はんぺん」、鹿児島の「つけあげ(薩摩揚)」など、海に面した都道府県にはほぼ100%と言って良いほどご当地蒲鉾が存在しています。

日本人と蒲鉾の付き合いは非常に古く、「蒲鉾」と言う文字は、西暦1115年(平安時代)に既に文献に登場しています。そこから数えても既に900年ですから、おそらく1000年以上も前から親しまれてきたのではないでしょうか?
冷蔵庫も氷も無い時代、獲れた魚をそのまま保存するのは難しく、身だけを摺って加熱する加工法を見出したのが始まりだと考えられます。素晴らしい日本人の知恵ですね。

さて昨今、その伝統食品が大きな岐路に立たされています。昭和50年のピーク時、日本の蒲鉾生産量は約104万トンありました。それが昨年の実績で47万トンとなりピーク時の45%まで急落しているのです。実は蒲鉾製品に限らず、日本の伝統食品は概ね同じような傾向にあります。その原因は何か?それは我々日本人の食生活の変化に他なりません。米の消費が年々落ち、パンの消費が増える傾向はここ数年顕著です。つまり、必然的に「ご飯のおかず」が売れなくなっているのです。
味噌、醤油、漬物、佃煮、明太子などなど、枚挙にいとまがありません。逆に牛乳、ヨーグルト、バターなどの乳製品やハム、ソーセージの加工食品が顕著な伸びを示しています。皆さんそれぞれの食卓はどうでしょうか?と言う事で、蒲鉾製品類のこれからの大きなテーマは「食卓の変化への対応」である事は明白です。そして是非、「洋の食」への日本の伝統食品のご利用を、飲食店の皆様にお願いしたいと強く願っている次第です。

次回は株式会社 三陸オーシャン 代表取締役 木村達男氏