第46回 第48回

随想第47回

阿部芳寛 土曜日の夜 水月堂物産株式会社 代表取締役社長 阿部芳寛

しばらく忘れていた春がこのごろ思い出した様に「ほや」っとやって来た。私は、一週間に一回くらいは飲みに行く事にしている。 夕焼けが沈んで物悲しい時分である。暖簾をくぐると、つい笑顔が出る様な風景が香りと共に漂って来る。

腰掛けに座りビールを頼む。 まず一杯ぐいっと飲み「アッー」と、そっと叫ぶ。隣に座った同級生からは、もう少し大袈裟な叫び声がきこえて来た。味わいのある料理と話、 そして味わいのある笑顔と出会うと時を忘れてしまう。私はこの店へは日本酒を飲むことを目的と定めてやって来る。わずか二合である。 二合という目安は単に「大二日酔い」を避ける為である。日本酒は旨いけど酔う。 たった二合で「大二日酔い」?よほど酒に弱いか、体質に合わないかと思われて然るべきなのであるが、今後の展開が問題なのである。

ここの店は芳醇でやわらかい「春陽」という酒が旨い。好い加減飲んだ後は割り勘にして領収書を誰がもらうかで少し譲り合って、 それからさよならのドアを開け、再び勇んでカラオケのドアを開けに行く。その店は我々が行く時間帯ではいつもカウンターに二名位しか客がいないので、 いつもの指定席の様な所に座り、まず乾杯をする。ここでは私は焼酎の水割りを飲むのであって、ほかの飲み物は遠慮させてもらう事にしている。 ところがワイン(赤)が出たり、時には日本酒の「初孫」が出たりして我目を疑う。 そっと首を巡らして見ると、なんと同級生が増えていたりする。しょうがない。両方飲むか、という事になる。 カラオケは勿論点数を入れて歌う。私は他力本願でデュエットが得意という事にしてある。

じゅんぐりに美声を張り上げて少々酔いが回り「さて、次行くかぁー」と、勇んで次のカラオケのドアを開けに行く。 ゆったり歩いて三分後、いつもの指定席。水割りをたのむ。 どういう訳かワインと大吟醸がついてくる。どういう訳かここでも同級生が増えている。次の朝は起きられない「大二日酔い」なのでござる。

次回はNPO法人こころの森 代表理事 古藤野 靖氏