第50回 第52回

随想第51回

いではく 日本人の公徳心 日本音楽著作権協会第十六代会長/作詞家 いではく

今回、中沢幸男県議を通じて宮城県社交飲食業生活衛生同業組合機関紙への寄稿を依頼された時、ふと浮かんだのが私の師である作曲家遠藤実先生のことである。

それは師が日本著作権協会(JASRAC)の第十二代会長をしていた頃、飲食店やホテル、美容室等々、多くの場所で利用されていたBGMの著作権使用料をいただくために障害となっていた著作権法附則第十四条の廃止に向けた運動を展開していた時の話。

権利者側はジャスラック、利用者側は生活衛生同業組合、双方から意見を聞く国会の委員会に意見陳述に出た会長は冒頭「私は皆さんにふるさとはどこですかと聞かれる度に、新潟県ですと答えていましたが、昨今の著作権論争が頭から離れないせいか、この間は思わず『チョサクケンです』と答えてしまいました。」と言って議員の先生方が大爆笑になった。というエピソードを思い出したからである。

時は移って昨年、私が第十六代会長に推挙され就任したのだが、いつの世の中にも問題は山積しており、今は音楽の利用もインターネットの出現によって大きく変化し、デジタル化によって、利用形態、法改正、グローバル化等々、その対応は多岐を極め、私のようなアナログ型頭脳では大変である。

現在、新聞その他の報道で盛んに論じられているのが音楽教室における演奏権著作権料徴収問題である。先日の記者会見でも意見を聞かれたが、私が思うに、まず根底にあるのは創作者、クリエイターに向ける敬意の欠除だと答えた。無から有を生む才能や努力に対して尊重や尊敬の念を持たないから諸問題が発生する。尊重する意見があれば、創作物を使ったらまず対価を払うという行為が生まれる。額の問題は別にして。

企業にとってお金は大事なものだが、もっと大事なものは心、持つべき精神だと思う。それが文化国家をつくる基本だと思っている。相手を思いやる心、日本人が世界から尊敬されている。震災時にもきちんと並ぶ謙譲の心や公徳心というものにもう一度目を向けてほしいと切に願っている。

次回は日本たばこ産業株式会社 東北支社 支社長 近藤章功氏